竜介と壮太の闘い

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壮太の抗い

――新宿・高層ビル29階《壮太》意識の隅で響いていた低い振動音が、ぷつりと切れた。それとともに壮太を襲っていた何本ものロボットアームが、一斉に動きを止める。「……ぅっ」がしゃん、と錠の外れる音がし、X字に磔にされていた壮太の身体は開放された...
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竜介の最期

「だりゃあああああああっっ!!」緑の溢れるフロアの中に、竜介の裂帛の叫びが反響する。繰り出された竜介の左拳が、音をまとって唸る。かろうじて江波は体を捻らし、避けた。「でやああっ!!」続いて繰り出された縦の蹴撃は避けきれず、江波の鼻先を掠めた...
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竜介VS江波3

――新宿・高層ビル30階「起きろよ」 遠くで、声が聞こえている。竜介はうつ伏せに地面に倒れたまま、上から降ってくるその声を聞いていた。 腕を動かそうと力をこめた。動かない。 足を動かそうと力をこめた。動かない。 ――なんでだ? おれ、どうし...
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壮太VSベア

――新宿・高層ビル20階「ふへへへ、竜介を助けに来たのか! 馬鹿が! 二人揃って血祭りにあげてやる!!」 刺客の男はそう言うと、巨躯に似合わぬ意外な俊敏さで、壮太の方へ踊りかかってきた。 更衣室で竜介のロッカーから脅迫状を発見してから、壮太...
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竜介VS江波2

「でりゃあっ」竜介の呼気がフロアに響いた。裂帛の気合とともに、青年は地を蹴って飛びかかる。拳を放つ。江波はそれをステップして軽く避わした。そのまま、竜介の脇に回り込む。竜介が反応する前に、ずむ、と内臓に響く肘を青年の横っ腹に叩き込んだ。「―...
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竜介VS江波1

――新宿・高層ビル30階「久しぶりだな、竜介」竜介が30階に辿り着くと、そこには江波が立っていた。待ち構えていたといった風情だ。フロアには、江波一人の気配だけしかしなかった。人海戦術はここで終わりか。一階の入り口から、無数のチンピラ達の暴力...
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事件

五年前の記憶は、徹底的に壮太の男としてのプライドを苛んでいた。それは見知らぬ姉の恋人への憎悪となって壮太の中に根付いていった。 ――姉を差し出した男に、いつか自分が受けたのと同じ屈辱を味わわせてやる。 小学校を出て、中学を出ると、壮太はその...
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壮太の敗北

壮太が格闘技を習いはじめたのは、五年前の事件がきっかけだった。 五年前、まだ小学生のとき、壮太の姉は謎の男達に浚われた。二人で住んでいたアパートに、突如見知らぬ男達が押し入ってきて、力づくで姉を連れていったのだ。 壮太は何もできなかった。姉...
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竜介の敗北

暴力団に利用されて借金を背負った彼女を守るため奮闘する青年、竜介。 喧嘩が強く、ちんぴらたちを返り討ちにしていた竜介は、ある日、背後からの襲撃にあう――。 * * * 竜介は何かにつまずき、思いっきり前につんのめった。足がもつれ、空回りする...